慢性腎臓病の緊急入院患者、体重が重い方が高い生存率

東京医科歯科大学の研究チームが、透析期腎不全患者のみならず、慢性腎不全患者(透析導入となっていない段階)においても「BMI高値」は予後良好となり得る可能性を示しています。

慢性腎臓病(CKD)患者は、塩分やタンパク質の制限などで摂取カロリーが少なくなりますが、これからは入院時は十分なカロリー摂取と体重維持が重視される可能性が示唆されています。

 

東京医科歯科大学の頼建光氏(同大大学院医歯学総合研究科茨城県腎臓疾患地域医療学寄附講座教授)と伏見清秀氏(同医療政策情報学分野特別研究教授)、菊池寛昭氏(腎臓内科大学院生)の研究チームが、この研究成果を 科学誌「PLOS ONE」で発表しています。

 

f:id:oddnumber-fish:20190308210619j:plain

 

世界的にも有病率が極めて高い「慢性腎臓病(CKD)」は、進行性の疾患でもあり、生活習慣病や加齢などが原因で、腎臓の働きが低下する病気です。

発病しても自覚症状がほとんどなく、進行して末期腎不全になると透析療法を行うこととなり、一方で、心疾患・サルコペニアなどの重大な合併症リスクがあるため、予後不良となる。 

 

CKD患者は「摂取カロリー」を制限しなければならない傾向にありますが、(塩分制限やタンパク摂取制限など)「摂取カロリー」を制限することが生命予後にどのような影響を与えるかは明らかにされていませんでした。

 

血液透析患者では、BMI(肥満度を表すボディマス指数)が高いほうが生命予後良好と関連する「肥満パラドックス」と呼ばれる現象が近年、注目されている。

 

CKDの病態は複雑・多様であり、保存期(透析を導入していない時期)のCKD患者の場合、その「至適BMI」の管理に関する研究は困難となっており、画一的な基準は未だ存在していません。

 

そこで、今回同研究グループは、DPCデータ(日本国内大規模診療データ)を用いて、緊急入院となった約2万6千人の透析導入となっていないCKD患者を抽出し、感染症合併の有無、糖尿病合併の有無で層別化を行い、「BMIと院内死亡率の関連」を検証した。

その結果、炎症性疾患合併の有無に関わらず、痩身は死亡リスクを増大させることが判明。

 

逆に、BMIが高ければ高いほど、入院中の予後が良好となる傾向があったとしています。

また、糖尿病を合併する感染症非合併群においては、肥満による生命予後に対するメリットは減弱しています。

さらに、糖尿病非合併のCKD患者においては、感染症合併の有無に関わらず、高体重が短期予後良好と関連する傾向が認められています。

 

CKDは、尿毒素などによって体内で慢性的に炎症が続き、エネルギーを失いやすい状態だと考えられています。

研究チームの頼建光 教授は、

「緊急入院し、体に大きな負荷がかかる状態では、体内に蓄えられた脂肪や筋肉のエネルギーの量が、生存率を左右するのではないか」と話しています。

 

今回の研究結果では、

国内の大規模診療データベースによる「保存期腎不全患者」を対象にして、

「感染症の有無」、「糖尿病合併の有無」による細かい層別化を可能とし、

それぞれのグループにおける「BMIと生命予後との関連」を明らかになり、

らに、保存期CKDでは、十分なカロリー摂取と体重維持がより重要視される(高体重が生命予後の観点では有利となる)可能性が示唆されています。

 

研究チームでは、この研究結果は臨床的な意義があり、CKD患者のより適切な栄養管理の進歩にも寄与する可能性があるとしています。