国産初の遺伝子治療薬『コラテジェン』

体内に遺伝子を入れて病気を治す「遺伝子治療薬」が、

早ければ 2019年5月にも日本で初めて登場する見込みとなります。

薬事承認の手続きに基づいて、厚生労働省の専門家会議で足の血管を再生する薬と血液がん治療薬の承認が了承されました。

遺伝子治療薬の開発は海外の製薬企業が先行するなか、血管再生薬については日本企業初の承認事例となります。

これが難病患者の治療に道を開くことにも繋がると期待されます。

 

血管再生で承認されたのは、東証マザーズに上場する大阪大発の創薬ベンチャー「アンジェス」が開発したヒト肝細胞増殖因子(HGF)遺伝子治療薬「コラテジェン」

 

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コラテジェンは、

標準薬物治療の効果が不十分で、血行再建術が難しい慢性動脈閉塞症(閉塞性動脈硬化症・バージャー病)における潰瘍の改善を効能・効果として、

国内の投与対象者数は年間270人ほど。

海外で承認している国は、現在はありません。

 

重症の動脈硬化で血管がつまった足に、新たな血管を作る遺伝子(HGF)を注射して、詰まった部分の周囲の筋肉で働かせて、治療。

臨床試験では、患者の約7割で症状が改善したとしています。

閉塞性動脈硬化症は、糖尿病患者などに多く、

血管が詰まって足などが壊死や潰瘍を起こします。重症になると、足の切断もあります。

治療対象の患者は、年間5000~20000人ほどと言われています。

 

患部の筋肉に2~3回に分けて注射する。

阪大病院などで患者 24人に投与した結果、うち 13人で潰瘍が治る効果を確認し、

目立った副作用はなかったとしています。

 

厚労省の部会は「効果は推定段階」と判断。

承認は5年間の「期間限定」とし、

今後5年間で、投与した120人と投与しない80人を比較して、有効性を評価することを正式承認の条件とした。

 

正式承認を経て、薬価は2019年5月にも決まるとされていますが、

複数の関係者によると、治療費は1人あたり200万~300万円になるよう設定されるとの見方もあります。 

アンジェスは大阪大学発の企業でマザーズに2002年上場し、会社を設立した1999年からコラテジェンの開発を手掛けてきました。

2008年にコラテジェンを承認申請しましたが、

データ不足でいったん取り下げ、2018年1月に再申請しています。 

 

 

遺伝子治療薬は「究極の医療」と期待されていて、

従来治療の難しかった病気を治すと言われています。

様々な病気で原因が突き止められ、遺伝子治療薬の有効性を示す報告も増えています。

イギリスの調査会社「エバリュエート」によると、

2024年の遺伝子治療薬の世界市場は1.7兆円で医薬品全体の1%の見込み。

これまでに世界で承認されているのは約10製品。

ただ、年率100%を超す大きな成長が見込まれいて、

アメリカでは今後 毎年約 10品目が承認される見通しです。

日本でも、毎年複数の製品が発売される予定です。

 

患者は少数でも高い薬価が期待でき、各国政府も早期承認制度などで開発を後押ししています。

従来では15年ほどかかっていた新薬発売までの期間が、遺伝子治療薬なら数年に短縮でき、製薬企業のリスクを抑えると言われています。

ただ、薬価が高額のため社会保障費の増大につながり、財政を圧迫するとの懸念もあります。

 

遺伝子治療薬の実用化で日本は出遅れいます。

低分子化合物やiPS細胞などの研究に予算や研究者が集まり、遺伝子治療の研究が停滞したことがある。

ただ、ここにきて日本企業も相次ぎ開発に着手している。

「第一三共」は東京大学と組み、脳腫瘍の遺伝子治療薬を開発中で、早ければ2019年中にも承認を得る見通し、

「アステラス製薬」や「武田薬品工業」も、血友病などの遺伝子治療薬の開発を続けています。

 

 

 

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