iPS創薬でALS治験

慶応大の研究チームは、全身の筋肉が徐々に衰えていくALS(筋萎縮性側索硬化症)の治療につながる候補薬をiPS細胞で発見。

患者に投与する治験(臨床試験)を 2018年12月から開始しました。

iPS細胞で病態を再現して、

パーキンソン病の治療に使われている既存の薬で、患者で効果を確認する。

 

iPS創薬の治験は、

京都大の筋肉の難病「進行性骨化性線維異形成症(FOP)」と、

慶応大の遺伝性難聴「ペンドレッド症候群」に続いて、国内で3例目となります。

iPS細胞による薬の治験は、

患者本人から作る細胞で薬を試せるので、効果を見極めやすい特徴があります。

 

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慶応大の岡野栄之教授らの研究チームは、

ALS患者から取り出したiPS細胞を培養して神経細胞を作製し、病態を再現。

これを使って1230種類以上の薬を試したところ、パーキンソン病の治療薬「ロピニロール塩酸塩」が有効なことを突き止めました。

 

細胞の重要な器官であるミトコンドリアを活発にさせて、細胞が死ににくくなる効果があり、

血縁者に患者がいない孤発性ALSの患者から採取した細胞から作ったiPS細胞でも試して、22タイプの孤発性ALSのうち16タイプで効果を確認。

 

ALSには既に2種類の薬がありますが、これらと比べて2〜3倍ほどの効果があったとしています。

 

治験対象は、

ALSを発症して5年以内、20~80歳の20人。

慶応大学病院で、「ロピニロール塩酸塩」を少なくとも6カ月間投与して、安全性や効果などを調べます。

 

 

慶応大学 岡野教授のコメント

「従来と全く違う発想で発見した治療薬候補で病気の進行を抑え、ALS克服に貢献したい」

「様々な患者の細胞を調べて、なるべく多くの患者に効く薬を目指したい」

 

ALSは、

筋肉が動かなくなることで歩行や呼吸が困難になるといった症状が出る難病で、有効な治療薬はほとんどないことも知られています。

現在、国内だけでも10000人ほどの患者がいます。

 

世界中でも多くの治験が進んでいますが、効果が見込めないケースが相次いでいます。

この原因としては、今までの遺伝子を導入してつくったモデルマウスでは、病態を完全には再現できていない可能性が考えられていました。なので、このiPS創薬の実用化に大いく期待されます。