医療用「ES細胞」を提供へ

「ヒトの再生医療に用いるES細胞(胚性幹細胞)を研究機関や製薬企業へ提供する」と京都大学 ウイルス・再生医科学研究所が発表。

研究チームは、不妊治療で余った受精卵からES細胞を作ることに成功して、既にストック・提供できる体制も整っています。

臨床研究に使える医療用ES細胞の提供を認められたのは国内初。

 

「ES細胞」とは、

iPS細胞と同様に身体のさまざまな細胞に変化できる万能細胞で、病気や怪我で傷んだり失われたりした組織や臓器を修復する再生医療への活用が期待されています。

 

f:id:oddnumber-fish:20190111021520j:plain

(ES細胞の写真)

 

京都大学は、様々な細胞に変化する能力のある幹細胞(つまり、iPS細胞やES細胞)を臨床応用する場合は、ウイルスなどが混入しないような品質管理のために、専用の処理施設整備などに取り組むとともに、不妊治療で使われなかった受精卵からES細胞を作って、それをストックする体制が完全に整う見込みとなっています。

 

京都大学は、以前からiPS細胞でもストック事業を実施中で、

ES細胞でも培養条件が同じなため、iPS細胞を使用している機関はES細胞の導入も容易としている。

既に、国内数ヵ所の機関から問い合わせがあるという。

 

臨床研究を希望する研究機関などから申請があれば分配する。

細胞自体は無償で、運搬費などで3~6万円ほど必要としています。

 

ES細胞もiPS細胞と並び、再生医療での活用が期待されていますが、

ES細胞は、受精卵を壊して作製することから倫理的問題が指摘され、これまでは基礎研究の利用のみと限られていました。

 

そのため、日本では臨床応用にはiPS細胞が先行しているのが現状です。

一方、海外では再生医療へのES細胞の活用が進んでいて、すでに50例以上の臨床試験の実施例があり(アメリカ、イギリス、韓国など)、医療応用を目指す動きが本格化しています。

 

日本でも2014年に、基礎研究用のよりも安全性を高めた医療用ES細胞の作製を認める新指針を策定し、それを機に京都大学は計画を推進。

京都市の足立病院から不妊治療終了後に廃棄される予定だった受精卵の提供を受けて、ES細胞を作製した。

国立成育医療研究センターでも同様の計画が進んでいて、近く提供を開始する予定となっています。

 

京都大学 ウイルス・再生医科学研究所の末盛准教授(幹細胞生物学)のコメント

「我々のES細胞を提供することで、国内でのES細胞の臨床研究や治験を増やし、iPS細胞と一緒に再生医療全体を発展させたい」

「国内では海外より、ES細胞を使った臨床応用で後れを取っている」

「再生医療で、iPS細胞に加えてES細胞から作った細胞を移植し、比較検証することで、安全性や有効性の向上に貢献できる」

「ES細胞とiPS細胞は同じような性質だが、作製過程は異なる。だからこそ比較して、治療に適切な細胞を探る必要がある」