病気腎移植が「先進医療」承認
厚生労働省の専門家会議は、
ガン治療で取り出した腎臓を別の腎不全患者に移植する「病気腎移植(修復腎移植)」について、「先進医療」(※保険適用外の先進技術を用いた医療)に指定することを条件付きで承認した。
腎臓を丸ごと摘出する提供者に不利益が生じる恐れがあるなど、安全面や倫理面での問題が指摘されていて、
厚労省は「病気腎移植」を臨床研究を除いて、原則禁止としていましたが、
これにより、保険診療と保険外診療を併用し治療を受けることができるようになります。
移植手術の費用は自己負担ですが、入院や投薬などの費用の一部には健康保険が適用され、患者の負担が軽くなります。
東京西徳洲会病院が計画を申請し、宇和島徳洲会病院とともに実施します。
病気腎移植(修復腎移植)とは、
腎臓がんなどの病気のため摘出した腎臓を、病巣を取り除いて修復し、
腎不全など移植を必要とする患者に移植する手術です。
移植を待ち望む患者の期待は大きい一方、ガンが再発するなどのリスクも指摘されています。
現在、国内では約32万人の腎臓病患者が透析治療を受けており、
日本臓器移植ネットワークによると、
その32万の腎臓病患者のうち約 12000人が腎移植を希望しているとされていますが、腎移植 待機期間は平均15年と長く、その間も多くの透析患者が亡くなってしまっているのが現状です。
同移植術への先進医療適用によって、新たに治療の選択肢が増えることは、透析患者さんにとって朗報と言えます。
将来的には、保険が全面的に適用される一般的な医療になる可能性もあります。
ただ、専門家からは提供者に不利益が多いと懸念する声も根強い。
会議終了後、座長の宮坂信之(東京医科歯科大名誉教授)は、
「病気腎移植に諸手を挙げて賛成ではない。ドナーの少ない日本で修復腎活用のアイデアはいいが、条件付きの賛成。評価のためのスタート地点に立ったにすぎない」と強調しています。
部会メンバーで日本泌尿器科学会の斎藤忠則(前保険委員長)も、
「多くの問題に態勢を整えたのは確かだが、評価はこれから」と指摘しています。
東京西徳洲会病院と宇和島徳洲会病院の2つの病院で、4年間で計42人に移植を実施する予定。
対象は、
重症の腎不全患者で、ドナー(臓器提供者)はガンの大きさが7cm以下で、医学的に摘出が必要な患者から腎臓を取り出して、腫瘍部分を取り除いた上で、別の末期腎不全患者に移植する。
治療後は腎臓の定着率のほか、臓器提供者や移植を受けた患者でガンが発症するかどうかや、副作用の件数、生存率などを調べます。
レシピエントの選択基準は「透析治療中で慢性透析治療の維持が困難な腎移植希望者」とされています。
「最初の5例ほどは実施ごとに部会で妥当性を検討する」などの条件付きで実施となります。(21例目までに移植した腎臓が機能しないケースが4例になれば試験を中止)
結果が良好だった場合は、他の病院でも実施される可能性もあります。
レシピエントの費用総額は、347万円で(そのうち、先進技術に関わる手術代や検査代などは、141万円)
高額療養費制度も利用できます。
なお、ドナーの費用は全額保険適用されます。
会議では、
移植のために、ドナー(臓器提供者)のガン治療に不利益がないよう「細心の配慮」が必要とし、
移植を受ける患者の選定にも「客観性と公平性を担保する必要がある」と指摘しています。
さらに、「ドナーの適格性だけでなく、患者の選定にも関係学会が推薦する外部委員が参加すべき」との条件を付けています。
一方で、徳洲会グループだけで実施することの是非を問う声や、これまで関連学会が反対してきた経緯から、「厳しい条件になるのはやむを得ない」との意見もありました。
宇和島徳洲会病院は、2011年10月に臨床研究として実施していた同移植の先進医療適用を厚労省に申請しましたが、
2012年8月に「透明性、公平性、医学的妥当性が不十分」との判断で承認がされませんでした。
2016年に内容が修正して再申請がなされ、これまで継続審議が続いていました。