忘れた記憶を薬で回復させる

忘れてしまった記憶を薬で回復させる実験に成功したと発表。

成功させたのは、東京大や北海道大などの研究チームで「記憶を回復させる効果」がある薬の発見は世界初。

これは、アルツハイマー病などの認知症の治療に役立つ可能性があります。

研究成果は、アメリ科学誌電子版に掲載されました。

 

f:id:oddnumber-fish:20181201204235j:plain

 

研究の実験は、マウスとヒトの両方に対して実施されました。

 

マウス実験では、

同じ物体を2つ与えると、トレーニング直後では新しい物体を好むのに対して、

3日以上経過した後だと記憶が失われて、2つの物体を同じように好むようになる。

しかし、ヒスタミン神経の活性化薬(H3受容体逆動作薬のチオペラミドまたはベタヒスチン)を与えるとトレーニング物体を思い出して、新しい物体を好むようになったという。

 

ヒトを対象にした実験では、

38人の参加者(20代を中心にした健康な男女)100枚程度の写真を見せて、1週間後くらいにどれだけ覚えているかをテストするという形式で実施され、

めまいの治療薬として使われているメリスロンを飲んだ場合と、飲まなかった場合で正解率を比較。

 

その結果、

薬を飲むと、忘れていた写真を思い出すケースが増え、正解率は最大で2倍近くも上昇したという結果が出ています。

元々記憶力が悪い人ほど、薬の効果があることも認められ、見たかどうか判別が難しい写真で正解率がより高まる傾向があることも確認できています。

この薬は、脳内の情報伝達に関わるヒスタミンという物質の放出を促進する働きがあり、この効果で記憶を担う神経細胞が活性化して、忘れた記憶の回復につながったと考えています。

 

忘れてしまった記憶をスムーズに思い出せるようになることが明らかになったことで、

記憶が回復する仕組みを詳しく解明して、認知症の研究成果と組み合わせることで、アルツハイマー病などの新たな治療法につながる可能性があります。

アルツハイマー病などの認知機能障害を治療できる薬の開発が期待されてます。

 

研究チームは、

こうした研究結果がヒスタミンの働きや薬の新しい作用だけでなく、柔軟に働く記憶のメカニズムの解明にも貢献する」としている。

 

チームの池谷裕二東大教授(薬理学)は、

「記憶回復のメカニズムが分かったので、今後はより効果の高い薬の開発につなげたい。認知症患者らの生活の質を高められる可能性がある」と話している。

 

認知症は、2025年には日本国内で 730万人(つまり5人に1人ほど)が発症の恐れがあると言われています。

今後、この研究が新たな治療法につながることが期待されます。