iPS細胞で脊髄損傷が改善させる

慶応大は、岡野栄之教授らの研究チームによるiPS細胞(人工多能性幹細胞)から神経のもとになる細胞を作り、脊髄損傷の患者に移植する計画の実施を正式に了承したと発表。

厚生労働省に承認を申請して認められれば、2019年夏にも移植が始まる見通しです。

iPS細胞を使った脊髄損傷の臨床研究は、世界初となります。

 

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慶応大の岡野栄之教授らの研究チームは、

iPS細胞から作ったヒトの細胞を慢性期の脊髄損傷マウスに移植して治療する実験に成功しています。

 

今回の計画は、脊髄を損傷して2~4週間ほどの「亜急性期」で、運動などの感覚が完全にマヒした18歳以上の患者 4人が対象となっています。

 

「京都大が備蓄している拒絶反応が起きにくい免疫タイプの健常者の血液から作ったiPS細胞」を使い、慶大が神経細胞のもとになる細胞を作製。

患者1人あたり、損傷部位に200万個ほどの細胞を移植して、新たな神経細胞を形成し、神経信号の途絶を修復して運動機能や感覚を回復させる。

他人の細胞を使うことによる拒絶反応を抑えるため免疫抑制剤を使うほか、

リハビリもして、手足などの機能の改善を目指す。移植から1年かけて安全性や効果を確かめます。

 

 

脊髄損傷とは、

脊髄(脳と身体をつなぐ神経の束)が損傷すると、損傷部位より先の手足などに運動機能や感覚の麻痺(まひ)が起きることを言います。

 

脊髄損傷患者は、

スポーツや交通事故などで原因で、日本国内だけでも年間5000人ほど、重度の場合は車椅子生活を強いられます。

損傷してから間もない患者は、細胞移植などで回復する可能性もありますが、

損傷から半年以上過ぎた「慢性期」の患者など治療が難しい患者は、10万人以上いると言われていますが、完治のための有効な治療法はなく、新たな治療法の開発に大きな期待が寄せられています。

 

 

研究チームは、重度の脊髄損傷を起こしたサルで実験しましたが、

後脚で立ち上がり、握力を回復させることに成功。

iPS細胞を使った移植はガン化が懸念されますが、マウスの実験ではガン化しなかったことも確認しています。

 

 

iPS細胞から作った細胞を患者に移植する研究は、理化学研究所などが目の難病の患者に対して2014年に実施。

京大も2018年10月に、パーキンソン病患者の脳に神経細胞を移植する臨床試験(治験)を実施しています。

他にも重症の心不全や血液の難病での研究も計画されていて、再生医療の実用化に向けて動きが加速しています。