白血病の遺伝子治療薬『キムリア』

厚生労働省 薬事・食品衛生審議会の再生医療部会は 2019年2月20日、

免疫細胞を活用して若年性の白血病を治療する新製剤「キムリア」の製造・販売を了承

スイスの大手製薬会社「ノバルティス」が開発して日本法人「ノバルティスファーマ」が申請していたもので、厚労省は早ければ 2019年3月にも正式承認する見通し。

免疫チェックポイント阻害薬(オプジーボ)に続く、ガン免疫療法として期待されています。

(既に使われているアメリカでは)投与1回 5000万円以上の超高額な治療費と、高い効果が国際的に注目されています。

 

先日、競泳女子の池江璃花子(いけえ・りかこ)選手(18)が白血病と診断されて注目を集めていますが、池江選手の病気の詳細は明らかになっておらず、この新製剤の効果があるかは不明です。

 

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キムリアは、

「CAR-T細胞(キメラ抗原受容体T細胞)」を使った日本初となる人工遺伝子を導入したガン免疫療法となります。

患者から採取した免疫細胞(T細胞)を遺伝子操作して体内に戻し、ガン細胞を何度も攻撃できるように改変させます。

特定の難治性の血液ガンに対し、高い治療効果があるとされます。

(患者から細胞を取り出してから体内に戻すまで50日程度かかりますが、治療は1回の点滴で済む。)

アメリカでは2017年に実用化され、ヨーロッパでも承認されています。

治療で使うCAR−T細胞の加工はアメリカで行いますが、神戸市で実施する計画もあるとしています。

 

「B細胞性急性リンパ芽球性白血病」(25歳以下)と「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫」のうち、再発や難治性の患者が対象となる。

利用できるのは、抗がん剤が効かなかった人などに限定しており、ピーク時で年間250人ほどと見込まれています。

なお、国内で承認されれば、CAR-T細胞を使ったガン免疫治療製剤の第1号となります。

 

臨床試験では、再発可能性や、抗がん剤が効きにくい難治性の「B細胞性急性リンパ芽球性白血病患者」(ALL)の約 8割に効果が確認されています。

同じく難治性の「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫患者」(DLBCL)でも約 5割に治療効果が確認された。 

劇的な効果の一方、

製剤の副作用で過剰な免疫反応を起こすサイトカイン放出症候群が起き、高熱や嘔吐(おうと)などが生じる場合があるとしています。

臨床試験では白血病患者の80%弱で副作用が出ていて、一部では一過性の心不全や呼吸困難なども起き、

因果関係が否定できない死亡例(脳出血など)が、ALLで2例、DLBCLで1例出ています。

 

さらに、遺伝子操作や細胞の培養にコストがかかるため、治療費が高額になることも課題となっている。

ノバ社によると、米国では白血病に使うと47万5000ドル(約 5300万円)かかり、治療から1か月後に効果が認められた場合にだけ、患者に支払いを求める方式が導入されています。

日本ではまだ薬価は決まっていませんが、高額薬剤としても知られる「オプジーボ」よりも高くなる可能性があるとされています。

 

 

※「免疫療法」 とは

体の中に侵入した細菌やウイルスなどの異物を排除する「免疫の力」を治療に使う方法。

免疫が弱まれば、薬を投与するなどして活性化。

ガン細胞が免疫細胞にかけてしまうブレーキを外すことに着目したのが、ノーベル医学・生理学賞を受賞した京都大の本庶佑(ほんじょ・たすく)特別教授。

免疫療法はガン治療として、

手術、化学療法(抗がん剤)、放射線に次ぐ、「第4の治療」として注目を集めています。

 

 

このほかに、厚労省の専門部会は、大阪大発の創薬ベンチャー「アンジェス」が開発した足の血管が詰まる重症虚血肢の遺伝子治療製剤「コラテジェン」の製造販売も条件付きで了承しています。

これは、血管再生などの作用を持つ遺伝子を患者の体外から入れて、症状を改善させる効果があり、正式承認されれば国内初の遺伝子治療製剤となります。