「iPS細胞の脊髄損傷 治療」の臨床研究を厚生労働省が承認
厚生労働省の再生医療等評価部会は 2019年2月18日、
iPS細胞(人工多能性幹細胞)から作った神経細胞のもととなる細胞を脊髄損傷患者に移植し、機能改善を試みる慶応大学の臨床研究計画を承認しました。
近く 厚労相が実施を認める通知を出して、年内にも最初の患者に移植される予定です。
この慶応大による臨床研究計画は、岡野栄之教授(生理学)らのチームが2018年12月に申請されたもので、
運動機能や感覚が完全に麻痺し、損傷してから2~4週間経過した患者4人(18歳以上)が移植の対象となります。
この臨床研究計画の具体的な内容としては、
京都大iPS細胞研究所に備蓄するiPS細胞を神経細胞の基となる細胞に変化させて、約200万個を損傷部位に移植するというもの。
他人由来の細胞なので免疫抑制剤も投与して、リハビリと含めて1年ほど掛けて、神経の再生や機能改善などの有効性を確認するとしています。
iPS細胞は段階を経て成熟する細胞で、これまでは成熟しきった細胞やそれに近い段階の細胞を移植していますが、今回は未成熟な細胞を使います。
細胞は未熟過ぎると腫瘍化の恐れがあり、有効性の確認とともに安全性の確認が重要となります。
腫瘍化を防ぐため、独自に開発した薬も使うとしています。
将来的には十分な治療効果が得られるよう、1000万個まで細胞数を増やすことも検討している。
承認後、慶応大の岡野栄之教授は記者会見で、
「細胞治療の研究開始から20年、ようやくスタートラインに立てた。一日でも早く安全な治療を届けたい」と話しています。
なお、同じく臨床研究の申請をしていた「大阪大のiPS細胞を使った角膜再生 治療」についても議論されましたが、継続審議するとして承認は見送らています。