認知症と腸内細菌が強く関連している

「認知症の人は、腸内のバクテロイデスが低い傾向」

 

国立長寿医療研究センターや東北大、久留米大などの共同研究で、腸内細菌は認知症と強く関連していることを見出しました。

 

これにより 食事や生活習慣との関連を調べることで、認知症のリスクを減らす糸口が見つかる可能性があるとしています。

この成果は、国立長寿医療研究センターもの忘れセンター 佐治直樹 副センター長らを中心とした共同研究チームによるもので、イギリス科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」に発表しています。

 

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人の腸には1000種類以上、約 1キログラムの細菌がいると言われていて、年齢や食事などで腸内細菌の構成割合が変わります。

 

研究チームは 2016年3月から1年間に、もの忘れセンターもの忘れ外来を受診した認知症患者34人(74~82歳)と、

認知症でない94人(68~80歳)の便に含まれる細菌の種類を比較し、

認知機能検査や頭部MRI(磁気共鳴断層撮影)検査などを実施し、検便サンプルを同センターのバイオバンクに収集。

それらから腸内の細菌の構成割合や認知症の有無を調べた。

 

微生物解析の専門企業である「株式会社テクノスルガ・ラボ」に検便サンプルを送付し、T-RFLP法(糞便から細菌由来のDNAを抽出し腸内フローラを網羅的に解析する手法)を用いて、腸内フローラを解析しました。

さらに 腸内フローラの組成と認知症との関連について、久留米大学バイオ統計センターと協力して統計学的に分析し、有効なデータが得られた60~80代128人分を解析したところ、やせ形の人に多いとされる常在菌「バクテロイデス」が3割以上を占めている人は、認知症の傾向が少ないことが分かっています。(その他の細菌が多い人に比べて、約10分の1)

逆に、バクテロイデスが少なく種類不明の細菌が多い人は、そうでない人に比べて罹患率が約18倍もあることも判明しています。

腸内細菌の状態によって、認知症のリスクを高める可能性があるのかどうかが、今回の研究で示されたとしています。

 

腸内細菌の構成割合と認知症発症の因果関係はわからないが、腸内細菌の作る物質が脳の炎症を引き起こす可能性が考えられる。

同センターは、メカニズムの解明に向けて研究を続けるとしています。

 

国立長寿医療研究センターもの忘れセンターは、

今後も東北大学と共同で、食事習慣・栄養の視点からも腸内フローラとの関連について調査を進める予定」と話しています。 

腸内細菌が認知機能に関連するという新しい知見は興味深く、腸内細菌の詳細な解析が認知症の治療法や予防法の開発のための新たな切り口になるかもしれません。

 

国立長寿医療研究センターもの忘れセンター 佐治直樹 副センター長のコメント

「今後、対象となった患者の追跡調査を進めて因果関係を調べる。食習慣との関連も解明して食事などを通じた予防法の開発にもつなげていきたい」

「食生活や栄養環境の面で、認知症のリスクを減らす糸口が見つかるきっかけになる可能性がある」

「認知症の早期発見や予防を考える上で、腸内の細菌状態が目安になる」

 

 

認知症の有病者数は、全世界で2015年には4680万人でしたが、2050年までに3倍に増えると予測されています。

日本だけを見ても、2012年に65歳以上の15%に当たる462万人が認知症とみられており、今後も増加傾向が続くと考えられています。