インフルエンザ治療薬「ゾフルーザ」の耐性ウイルスが検出
インフルエンザの新しい治療薬「ゾフルーザ」を使った患者から、治療薬に耐性を持つ変異ウイルスが発見されたと、国立感染症研究所が発表しました。
厚生労働省によると、国の研究機関として実際の治療で検出を確認したのは初めて。
「ゾフルーザ」は、臨床試験の段階から、ほかのインフルエンザ治療薬よりも耐性ウイルスが生まれやすいことは指摘されていました。
薬剤耐性化とは、
ウイルスや細菌が、変異して薬に対応できるようになることで耐性化すると、
その薬が効かなくなってしまうことです。
A型インフルエンザウイルス(H3N2型)に感染した21人に対してゾフルーザを使ったところ、 2人から薬剤耐性(耐性変異ウイルス)が検出されたとのデータを国立感染症研究所が公開。
このウイルスは、他の2人から検出された耐性変異を持たないウイルスに比べて、76~120倍 ゾフルーザの効きが低下。
厚労省によると、この「ゾフルーザ」が効果が低下するよう変異したウイルスが初めて確認されたとしています。
「タミフル」など、ほかのインフルエンザ治療薬に対しても、耐性ウイルスは既に確認されていますが、
厚労省は、こうした耐性ウイルスが検出される割合は、1~4%程度だとしていて、ウイルスに耐性をもたせないためにも薬を処方通りに飲み切ることが重要だとしています。
感染研インフルエンザウイルス研究センターの高下恵美 主任研究官は、
「引き続き情報を集めていく必要がある」と話しています。
インフルエンザ治療薬は、
「タミフル」「リレザ」「イナビル」の3種類でしたが、
「塩野義製薬」が開発し、2018年3月発売開始したゾフルーザは、
5日間連続で飲み続けたり、吸入が必要だったりする従来の薬と比べて、
ゾフルーザは錠剤を1回飲むだけで済む手軽さもあり、ネットなどでも「画期的な治療薬」として話題になったりして、急速にシェアを拡大しています。
(タミフルなど従来のインフルエンザ薬が、細胞内で増殖したウイルスの拡散を抑えるのに対し、ゾフルーザは、細胞内のウイルスの増殖自体を抑えます。)
塩野義製薬は、2018年の第2四半期決算説明資料で、
ゾフルーザを含む抗インフルエンザウイルス薬の国内シェアが約 65%(ゾフルーザの国内売上高、約 130億円)になると発表していました。
今回の厚労省の発表を受けて、処方の第1選択をゾフルーザから「イナビル」に変更した病院もあったりなどしていて、少しずつゾフルーザのシェアが減っていくかもしれません。
「1回の投与で済む」「耐性化しない場合は、ウイルス排泄量が早く減少」など、
効果には期待しながらも、
一方で、「耐性化のリスク」「コスト(税金と健康保険と自己負担)」「未知の副作用があるかも」と指摘もあり、
ゾフルーザの使用に慎重な姿勢を示す医療機関もあります。
また、薬価の問題もあります。
1回の治療費はゾフルーザが4789円、
タミフルが2720円、
(医療保険加入者は、この1~3割負担)
厚労省の推計によると、1シーズンでのインフルエンザ患者数は1000万人にとも言われていますので、
1000万人に対して、ゾフルーザとタミフルのジェネリックをそれぞれ処方した場合、その差は 350億円近くにもなり、社会保障費における重要なコスト削減のポイントとなる。
塩野義製薬はゾフルーザについて、
「処方の最終判断は医師にお任せしています。今シーズンから本格的に使われ始めたため、(耐性ウイルスについても)調査・解析を進めているところ。揃った段階でデータを開示していきたい」と話しています。