iPS細胞で「頭頸部ガン」治療へ
健康なヒトのiPS細胞(人工多能性幹細胞)から免疫細胞を作り、頭や首にできる「頭頸部がん」の患者に投与する臨床試験(治験)を、理化学研究所と千葉大学の研究チームが計画。
早ければ、2019年秋頃にも国に届け出るとしています。
了承が得られた段階で、投与を開始する予定。
これは、免疫を活性化させることでガン細胞の縮小を目指す治療法で、iPS細胞を使ったガンの治験は国内では前例がありません。
なお、公的保険の適用も見据えています。
治験は医師主導で、
対象となるのは、「頭頸(とうけい)部がん」(鼻・口・舌・顎・喉・耳 などにできるガンの総称)
国内では、ガン患者全体の約5%を占めるとしています。
この治験を計画しているのは、理研生命医科学研究センターの古関明彦副センター長と千葉大の岡本美孝教授らのチーム。
頭頸部ガンが再発して手術などでは治療効果が得られない患者3人が対象。
その後、肺がんなどにも対象を広げる予定としています。
計画では、
他人のiPS細胞から免疫細胞の一種である、血液中の「ナチュラルキラーT細胞(NKT細胞)」という免疫細胞を大量に作製し、
患者の血管から患部付近に注入する。
NKT細胞には、自らがガン細胞を攻撃するだけでなく、他の免疫細胞を活性化させて攻撃力を高める働きがあるとされています。
移植する細胞数は1回目は 3000万個で、2回目以降は副作用と効果を見ながら増減させていき、計3回 投与します。
移植後2年間、安全性やガン縮小の効果を調べます。
NKT細胞は血液中に0.1%ほどしかなく、培養にも時間が掛かるので、これまでは繰り返し投与するのは難しいとされていました。
こうした課題を解決するため、理研の古関明彦チームリーダーらは、
無限に増やせるiPS細胞からNKT細胞を大量に作る手法を開発。
マウスを使った実験では、ガンの増殖を抑えるなどの効果を確認した。
今回の試験で安全性に問題がなければ、次は有効性を調べる治験に入る予定としています。
ヒトのiPS細胞(人口多能性幹細胞)から作った免疫細胞(NKT細胞)でガン治療を目指す、理化学研究所と千葉大チームの臨床試験(治験)計画は、iPS細胞を使った新たな「免疫療法」となる可能性がありますが、
iPS細胞には、「ガン化の恐れ」という共通の課題があります。
今回の臨床試験で投与する「NKT細胞」は、元は他人の細胞のためガン細胞を攻撃した後には、患者の拒絶反応によって排除されて、ガン化などの悪影響はないと考えられていますが、治験で慎重に確認する必要があります。