「ALS」の治療抗体を開発
運動神経が徐々に消失して、全身が動かなくなる ALS(筋萎縮性側索硬化症)の原因タンパク質を細胞内から除去する抗体とその手法を開発したと、
滋賀医科大の漆谷真 教授(神経内科)らの研究チームが、
京都大学や慶応大学の研究チームとの共同研究で発表しました。
これにより、ALSの進行を止める薬の開発につながると期待できるとしています。
また、これは根治につながる治療法になる可能性もあるとしています。
この研究成果は、イギリスの科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」に掲載されました。
「ALS」は 進行性の難病で、
神経細胞が侵されて運動ニューロンが徐々に死滅していき、運動や呼吸などができなくなる難病です。
進行を遅らせる治療薬の開発は徐々に進んでいますが、未だ根治は難しいとされています。
国内の患者は、約 10000人ほど。
患者の神経細胞の中に、タンパク質「TDP 43」が異常な状態で蓄積することが原因の一つと考えられています。
滋賀医大の漆谷真 教授や玉木良高 医師らは、
ALSの多くで見つかる異常な「TDP 43」にくっ付いて分解を促す「抗体」を既に開発しています。
その抗体を細胞内で機能させるため抗体遺伝子を細胞に導入して、
細胞内でできた抗体と異常な「TDP 43」を一緒に「オートファジー(自食作用)」などで分解させる手法を考案。
ヒトの腎臓腫瘍からできた培養細胞に抗体遺伝子を導入すると、異常な「TDP 43」は減少し、細胞が死滅することも抑えられています。
脳に異常な「TDP 43」が蓄積されるようにしたマウス胎児の実験で、
抗体を作らせるようにすると、TDP43が減少したほか、発育にも影響がなかったとしています。
抗体が作られるようにしなかったマウスは、原因タンパク質の蓄積が進行しています。
(抗体がない培養細胞は2日間で4割が死滅しましたが、抗体の遺伝子を導入するとほぼ全てが生き残ったことが確認されています)
今後 研究チームは、ALSのモデル動物を作製して、ウイルスで神経細胞に抗体の遺伝子を導入する遺伝子治療の効果を確認していく予定で、
サルを用いた安全性試験も進めていき、臨床応用を目指すとしています。
滋賀医科大の漆谷真 教授は
「今後、動物実験などで安全性や効果を検証する必要がある。ハードルはまだあるが、ALS治療のための大きな一歩を踏み出せた」
「安全性を慎重に確認し、10年以内に臨床応用したい」と話しています。