がん免疫治療薬と筋肉量の関係

筋肉量が薬の効果を予測して、高額なガン免疫薬の投与を続けるかどうか見分ける指標の一つになる可能性がある。

「オプジーボ」などの新しいガン免疫治療薬の効果は、筋肉量が多い患者ほど長続きするという研究結果を、大阪大のチームが発表しています。

 

高額なガン免疫薬の投与を続けるかどうか見分ける指標になる可能性がある。

この研究結果は、イギリス科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」に掲載されています。

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肺ガンにおいて、免疫チェックポイント阻害薬(オプジーボなど)は日常臨床で用いられています。

体内の免疫を活性化させてガンを攻撃する「オプジーボ」や「キイトルーダ」は、一部の患者には劇的な効果がありますが、投与したうち2~3割の患者にしか効かない問題があります。

現在、治療効果の予測因子に関する研究が世界中で進められていますが、どの患者に高い治療効果を見込めるかを事前に予測することは難しい。

 

近年 筋肉は運動器官としてだけでなく、内分泌器官としての機能も注目されており、筋肉から分泌される「マイオカイン」(筋肉から分泌される生理活性物質)は、生活習慣病の予防や抗腫瘍効果をもつことが報告されています。

しかしながら、免疫チェックポイント阻害薬の治療効果と患者の筋肉量の関係については、これまで明らかになっていませんでした。

 

大阪大学医学部付属病院の白山敬之 特任助教と同大学院医学系研究科の熊ノ郷淳 教授らの研究チームは、オプジーボやキイトルーダの投与を受けた肺がん患者42人(30~80代)を対象に、腹部の筋肉量をコンピューター断層撮影装置(CT)で観測。

アジア人の平均的な筋肉量と比較し、筋肉量が多いグループと少ないグループに分け、治療効果との関係を追跡調査。

 

その結果、筋肉量が多いグループ(20人)では、薬の効果が7か月ほど続いたのに対し、筋肉量が少ないグループ(22人)は2か月ほどしか続かなかった。

効果が1年以上続いた人の割合も、筋肉量が多いグループの方が多かったとしています。

また すでに筋肉量が低下した患者は、そうでない患者に比べて投薬後にガンが進行するリスクが3倍ほど高くなったことも確認しています。

 

これによりオプジーボ治療における効果予測において、治療開始時点の筋肉量が重要な因子となる可能性が示唆されました。

 

研究チームの白山敬之 特任助教(呼吸器内科)は、

「筋肉からは、ガンの増殖を抑える物質が分泌されているとの報告もある。治療効果を上げるため、運動などで筋肉量を維持する取り組みが大切になるかもしれない」と話しています。