ガンのリスク上昇の原因

ガンを引き起こす恐れがある遺伝子異常は年を取るとともに増加して、過度の飲酒や喫煙で促進されることが遺伝子解析で分かったと、京都大や東京大などの研究チームが発表。

飲酒歴・喫煙歴が長い人ほど、発ガンに関わる遺伝子変異が起こる頻度が高まるとしています。

 

これまでも加齢や 飲酒・喫煙などによって、ガンのリスクを高めることは統計学的な傾向では明らかになっていましたが、これによって遺伝子レベルでも裏付けられた形になります。

この研究成果は、イギリス科学誌「ネイチャー(電子版)」に掲載されます。

 

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ガンは日本人の死因のトップで、その割合は急増しています。

ガン発症者の7割を65歳以上が占めていますが、なぜ高齢者がガンになりやすいかは分かっていません。

 

チームによると、ガンは細胞の特定の遺伝子に異常が生じて、増殖することで発症します。

加齢に加え、生活習慣によってもリスクが高まるとされていますが、詳細メカニズムは不明で、発症前にどのような変異が起きているかは分かっていません。

 

京都大学の小川教授は、

「加齢とともにがんになる人がなぜ多くなり、飲酒や喫煙がそのリスクをどう高めるのかを解明する重要な手掛かりとなる成果」として、早期診断や予防につなげたいとしています。

 

研究チームは、飲酒や喫煙とガンの関連が大きいとされる「食道」に注目。

発ガンに先立って起きる遺伝子の異常を調べるため、

25~85歳の食道ガン患者や健康な人、134人の正常な食道上皮(正常な食道の組織)を採取して、それを解析。

その結果、

ガン患者・健康な人を問わず、正常な細胞であっても食道ガンで頻繁に見られる「遺伝子異常」が加齢に伴って増加し、過度の飲酒や喫煙歴があるとさらに増加する傾向にあるとしています。

飲酒や喫煙の習慣がある人は、ない人に比べて、数倍多い。ガンとの関連が深いとされる「ガン関連遺伝子」でも同様の傾向が見られています。

ただし、がん細胞で一般的にみられる遺伝子変異のパターンとは異なる部分もあったという)

こうした異常を持った細胞は、70歳以上の高齢者では飲酒や喫煙の有無にかかわらず、食道全体の面積の40~80%に拡大していることも判明。

この遺伝子異常は、生後間もない時期に生じていた場合があることも分かっています。

 

 

食道がんは、毎年 20000人以上が発症していると言われています。

早期発見が難しく、難治性のガンの一つとされています。

チームの小川誠司・京都大教授(腫瘍(しゅよう)生物学)は今回の研究成果について、

「加齢による遺伝子変異に飲酒と喫煙が加わり、発ガンリスクが一気に高まる。予防には酒やタバコを控えることが重要。」

「ガンの初期の発生を解き明かす、大きな手がかり。一方で、(正常な細胞が)ガンになるにはまだ段階があり、飲酒や喫煙をしない人はそれほど心配することはない」と説明しています。