「線虫」で尿を嗅ぎ分けてガン検査

日立製作所が、線虫の1種で体長1mmほどの「C・エレガンス」と呼ばれる線虫に、人の尿の匂いを嗅がせて、その反応からガンを発見する自動検査システムを開発したと発表。

 

2019年内をめどに装置の量産態勢を整えて、 医療現場への提供を目指すとしています。

身体への負担もなく、1回で数千円ほどでガン検査が可能になり、実用化されればガン検査の大幅な負担減が期待できます。

 

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線虫を使ってガン検査をする仕組みを考案したのは、九州大学大学院理学研究院助教であり「HIROTSUバイオサイエンス」社長の広津崇亮さん。

この検査システムは、日立製作所とHIROTSUバイオサイエンスとの共同研究で進められて来ました。

 

線虫によるがん検査を、

「N-NOSE(エヌ・ノーズ)」と名付け、

感度(ガン患者をがんであると判断できる確率)を高める工夫を重ねて来ました。

現在のところ、

発症例が多い 胃ガン、大腸ガン、乳ガンをはじめ、胆のうガンや盲腸ガンといった稀なものも含め、

全部で18種類のガンに反応し、その有無を判別できることがわかっていて、

判定の精度は 95.8%とされています。

 

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線虫は、飼育コストも安く、取り扱いが容易で大量培養できることから、これまで科学実験などにも幅広く使われてきました。

この線虫の特徴は、人間の100万倍とも言われていて、犬と同レベルかそれ以上に優れた「嗅覚」を持つこと。

目がない代わり、鋭敏な嗅覚でエサを判別して近づいていく習性があります。

 

ガン患者の尿には独特の匂いがあると言われていて、

「線虫にとっては、それは好きなにおいなので寄っていき、逆にガンではない健常者の尿は、嫌いな匂いなので逃げていく」という性質を利用します。

 

 

日立製作所が試作した装置は、

線虫と尿の配置に加え、線虫の動き方の撮影や結果の解析を自動で処理する。

画像診断などでは見つけにくいような病巣を、低コストかつ尿1滴だけという手軽さで、ステージ0や1の早期ガンを発見できます。(診断時間も90分ほどで可能)

 

検査の基礎費用は1回で数百円ほどで、装置のコストや人件費を考えても数千円程度に抑えられるとしています。

 

現段階では「ガンの有無」を判定するだけに留まっていますが、すでにガンの種類を特定する研究も進めています。

遺伝子の組み替えによって、ガンの違いを特定する線虫を生み出そうというこれまでにない研究です。

特に力を入れているのは膵臓(すいぞう)ガン。

膵臓は身体の中央にあるため腫瘍を見つけにくく、早期発見が難しいガンとされています。

 

ガンは、1981年以降35年もの間、日本人の死因第1位を占めています。

年間 30万人がガンで命を落としています。(つまり、3人に1人がガンで亡くなっているということです)

また、生涯のうちにガンにかかる可能性は、男性の2人に1人・女性の3人に1人と推測されている。

 

医療費も問題になっています。

厚生労働省の発表によると、2013年には3兆8850億円がガン医療に充てられています。

この膨大な死亡者数と医療費を削減するには、何といっても早期発見・早期治療が第一です。

ところが、今のガン検診は受診者にとって面倒なわりに、費用対効果に課題がある。

胃ガン、大腸ガン、肺ガン、子宮ガン、乳ガンなどと部位別に診断を受けねばならず、時間は掛かるし費用もかさみます。

また、とくに早期ガンは見つかりにくいという難点もある。

そうした状況もあって、日本のガン検診の受診率は全体でも3割ほどにとどまり、それがまた手遅れにつながるという悪循環です。

この「線虫」によるガン検査は、こうした課題を一挙に解決するような、ガン検診の大変革になるかもしれません。