「遺伝子誘導」で心筋や血管のもとを作製

心筋梗塞が起きた部分で増殖する「線維芽細胞」に、

たった1種類の遺伝子を入れて働かせることで、心臓を構成するさまざまな細胞を生み出す「心臓中胚葉細胞」に変身させることに成功したと、

筑波大の家田真樹教授らの研究チームが、アメリ科学誌「セル・ステムセル」に発表しました。

 

この研究チームは、

変身させた細胞から、拍動する心筋細胞や血管の細胞を作り出す方法を確立するのが次の目標としていて、

遺伝子を薬のように注射し、体内で心臓の機能を再生する治療に結び付けたいとしている。

心筋梗塞や拡張型心筋症などの再生医療への応用が期待されます。

 

 

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iPS細胞など万能細胞を使わず、患者の体内で病気の治療につながる細胞を直接作り出す技術は、

「ダイレクトリプログラミング」と呼ばれ、新たな再生医療として注目が集まっています。

iPS細胞を使う再生医療よりも安価に実現できると見込まれています。

 

iPS細胞を介さずに目的の細胞を直接作れるため、治療前の準備が簡単。

拒絶反応やガン化のリスクが低いなどのメリットもあり、九州大学京都府立医科大学でも研究成果が相次いでいます。

ヒトiPS細胞から、新薬開発試験などに使う心筋細胞を生み出すには高価な薬剤が必要なため、これが実用化されればコストダウンにつながることが期待できます。

 

 

筑波大学の家田教授は、2010年に皮膚や心筋梗塞を起こした組織などにある「線維芽細胞」に、3種の遺伝子を導入して心筋再生を技術を開発しています。

 

今回の実験では、動物の背骨の形成に重要とされる遺伝子「Tbx6」という遺伝子1つだけで、心筋にも血管にもなれる「心臓中胚葉細胞」の作製に成功。

さらに、その心臓中胚葉を心筋や血管の細胞に変えることも成功しています。

「Tbx6」を培養皿に入ったマウスの線維芽細胞に注入して、4日で4割ほどがこの細胞になったとしています。

その後、ヒトのiPS細胞でも「心臓中胚葉細胞」の作製に成功しています。

(遺伝子が働く時間を調節すると、心筋細胞へ成長させることも出来ています)

 

 

将来的には、患者の心臓にカテーテルで遺伝子を導入し、心臓にある線維芽細胞から心筋細胞を直接作り、病気を治療できる可能性があります。

現在の心臓の再生医療では、体の外でiPS細胞から心筋細胞を作って移植する方法が検討されていますが、

この技術が実用化できれば、患者の体外で心筋細胞を作ってから体内に戻す必要はなく、開腹手術も不要になります。

 

筑波大学の家田教授は、

「iPS細胞の課題を解決できる可能性がある」

「生体内での実験も行い、安全性や実効性の検証を進めたい」と話しています。

 

 

日本国内だけでも、心筋梗塞など心疾患の患者は100万人を超えています。

心筋梗塞などの心疾患は、死因の2割を占めていて、

これは、悪性新生物(がん)の3割に続く数字です。

心臓移植 件数は少なく、治療を受けるのが難しいなどの課題もある。