iSC細胞が脳梗塞で死んだ細胞を再生させる
「死んだ神経細胞は再生しない」という定説を根底から覆す大きな発見。
兵庫医科大学の研究グループが、脳梗塞の組織の中に神経細胞を作る細胞があることを発見し、
それを採取、培養して移植することで、
「脳梗塞で死んだ脳細胞を再生させる」研究を始めています。
この研究グループは、
「2019年頃を目処に、臨床試験の前段階まで持っていきたい」と話しています。
脳梗塞は、
血管が詰まって狭くなり、血液が送られず脳の神経細胞が死んでしまう病気で、
一命を取りとめても脳の機能が失われて、マヒや言語障害などの後遺症が残ります。
兵庫医科大学の松山知弘教授、中込隆之准教授らの研究グループが、
そうした後遺症に苦しむ患者を無くそうと研究を続けていた中で、
2009年に、死んだはずの神経細胞の周辺に生き残って脳を修復する細胞が存在していることマウスの実験で発見し、
2015年には、血管の周囲の細胞が脳の一大事を受け、神経細胞などに変化できる「多能性」を獲得していることが分かりました。
この研究チームは、重症の脳梗塞を起こしたヒトの脳でも存在を確認し、「iSC細胞(虚血誘導性多能性幹細胞)」と名付けました。
松山教授は、
「脳梗塞に陥った脳組織の中には、生きている細胞は無いというのが常識なんです。しかし、全部死んでしまった組織の中に実は根性で生き残って脳を修復するという強い意志を持っているけなげな細胞がいるんです。その意味では定説が覆っています」
と語っています。
身体の様々な細胞をつくれる多様性幹細胞だと、IPS細胞(人口多能性幹細胞)はよく目にしますが、IPS細胞がガン化しやすい欠点があるのに対して、ISC細胞は体内で自然に生まれる細胞のためガン化しにくいと考えられています。
この細胞の移植によって、脳の再生も期待できることから、
既に培養したマウスのiSC細胞をマウスの脳に移植して、ある程度 正常に機能している状態を確認。
さらに、日本医療研究開発機構(AMED)の支援を受けて始めた研究では、
ヒトのiSC細胞をマウスに移植した場合の効果を確かめて、マウスで効果があれば、ヒトへの応用の可能性も期待できます。
中込隆之 准教授(兵庫医科大)のコメント
「iSC細胞はもともと体内で作られるもので(自家細胞)移植しても、ガンなどの危険性は低い」
高木俊範助教(兵庫医科大)のコメント
「脳梗塞の脳には再生させようとする働きがある。そのメカニズムを生かした治療につなげたい。(脳梗塞に罹った脳は、機能を再生するメカニズムが強いため)」