「富士フイルム」が企業初のiPS治験へ
富士フイルムは、
iPS細胞(人工多能性幹細胞)を用いた移植医療の臨床試験(治験)を2018年度中に厚生労働省へ申請する方針を明らかにしました。
2019年にも治験を始める考えで、実現すれば企業として国内初のiPS治験となります。
iPS細胞を使った医療の実用化に向けた取り組みは、理化学研究所や大学などが中心でしたが、これで企業でも治験が始まればiPS医療の裾野が広がることにも期待できます。
治験の対象は、
白血病の治療で骨髄移植を受けた患者の約4割がかかる合併症「急性移植片対宿主病」。
移植骨髄に由来するリンパ球が、
患者の正常細胞を異物と認識して攻撃し、皮膚炎や肝障害、下痢などを起こします。
国内の発症者数は年間1000人以上と言われています。
治験ではiPS細胞から作る特殊な細胞を患者に注射し、リンパ球による攻撃を抑える。
富士フイルムによると、
医薬品医療機器法に基づく国の審査機関との事前交渉は、ほぼ終えていて、
治験を経て、2022年に製造・販売の承認を目指す。
なお、アメリカでも治験を申請する計画です。
世界初のiPS治療は2014年、理化学研究所などが目の難病患者に行っています。
これまで国内で認められた臨床研究や治験は重症心不全、パーキンソン病など4例。
直近では、2018年9月にiPS細胞から作った血小板を移植する京都大の臨床研究が厚労省の部会で了承されています。
医療分野を次の成長領域と位置付ける富士フイルムは、
日本初の再生医療製品を発売したジャパン・ティッシュ・エンジニアリングを2014年に子会社化するなど、iPS細胞を用いる再生医療に注力。
なお、企業によるiPS医療の治験は「大日本住友製薬」やベンチャー企業の「ヘリオス」なども計画しています。