たった1滴の血液でガン13種を早期発見
1滴の血液から13種類のガンの診断を同時にできる検査法を国立がん研究センターなどのチームが開発しました。
「腫瘍マーカー」を使う現在の血液検査よりも発見率も高く、かなり初期段階のガンも見つけられるのがメリットです。
この研究は2014年に、国立がん研究センターを中心に、9つの大学と6つの企業が参加してスタートしました。
チームはがん患者らを対象とした臨床研究を進め、数年以内に国の承認を得たい考えています。
現在のガン検診は、それぞれのガンによって異なる種類の検査を受ける必要があります。
患者にとっての負担も大きく、中には痛みや精神的な苦痛を伴う検査もあるのが現状です。
現在、日本人の2人に1人がガンと診断されるとも言われていますが、検診の受診率は全体の3割程度で、これは先進国の中でも低い割合になります。
検査の負担を軽くすることは、
ガンの早期発見・早期治療を実現する上で、とても重要な課題です。
センターの落谷孝広・分野長は、
「患者の体への負担が少ない比較的安価な検査になる。早期発見できれば、より効果的な治療ができ、医療費削減にもつながる」
「国民の多くの方がこの新しい検査を受けられる時代がくれば、がんを早く見つけ出し、早く治療することができるようになります。それによって、がんによる死亡者数を国民全体で減らすことが究極の目標です」
「いくつものがん検診を受けなくて済む。いずれは、がんのステージや特徴も分
かるようになるだろう」
腫瘍マーカー検査は、主にがん細胞が死ぬ時に出るタンパク質を検出するもので、
ある程度ガンが進行してからでないと発見が難しい上に、正確性にも問題がある。
そこでチームは、ガンが血中に分泌する「マイクロRNA」と呼ばれる物質に着目。
マイクロRNAは、遺伝子の働きを調節し、
細胞の働きを変えてしまう作用があることが分かっています。
人間の血液の中には、およそ500種類ものマイクロRNAが流れていると言われていますが、
検査で注目するのは、
「がん細胞が放出するマイクロRNA」です。
最新研究によって、ガンのタイプによって、
放出するマイクロRNAの量や種類が異なることも分かっています。
国立がん研究センター研究所では、
極めて微量のマイクロRNAを正確に測定できる装置を企業との共同で開発しました。
国立がん研究センターや国立長寿医療研究センターなどに冷凍保存されていた約43000人の血液を使い、乳がんや大腸がんなど13種類のガンに特徴的なマイクロRNAを調べて、
ガンそれぞれに2~10種類の特有のマイクロRNAがあることが判明。
分泌量の変化を調べることで、どのガンも95%程度の確率で発見できています。
これまでは、1度の検査で複数の種類のガンを早期発見できるような検査法はなく、
これが人間ドックなどに導入されれば、ガンによる死亡を減らせる可能性があり、
2020年を目処に実用化を目指しています。
なお、検査費用は2万円ほどになる見込みです。
今後、人工知能(AI)を分泌量の分析に利用すれば、検査の精度をさらに高められる可能性もあります。
ただ長期間保存した血液は、マイクロRNAが変質している恐れもある。
このため新たにガンと診断された人たち、約3000人以上の新鮮な血液を採取し、有効かどうかを調べる臨床研究を進めていく予定。
現段階では、一般の人を対象とした研究は予定していないとのこと。
研究チームは、まず乳がんの検査法としての承認を目指したいとしています。