iPS細胞から『ミニ肝臓』を大量作製
ヒトのiPS細胞から、直径約0.1ミリ程度の「ミニ肝臓(iPSC肝芽)を1度に大量製造することに成功しました。
肝機能に異常がある患者に、
血管から「ミニ肝臓」として肝胚(かんが)を移植する治療法につながる可能性があり、これは再生医療の実現に道を開く成果です。
横浜市立大学の谷口教授は、
「今後、細胞のがん化などを調べる品質評価の手法を確立する必要があるが、ミニ肝臓を使う臨床研究に向けて一定の目処がついた。19年に国に臨床研究の承認申請をしたい」
と話しています。
臓器移植の需要が年々増え続ける一方で、
ドナー臓器の供給は絶対的に不足していて、
肝臓移植を待つ間に命を落とす患者の数は、
年間数千人以上とも言われています。
臓器移植に代わる治療法として、新たな再生医療技術を開発していくことは、多くの患者救済のために必須だと考えられています。
この研究チームは、2013年にヒトのiPS細胞からミニ肝臓を作ることに成功していましたが、1度に数十個ほどが限度でした。
実際の治療で使うには、
ミニ肝臓を数万個以上作る必要があり、そこが課題になっていました。
今回の研究では、
微細なくぼみをつけた特殊な培養プレートを複数の民間企業と共同で開発し、
肝芽(ミニ肝臓)を構成する3種類の細胞をすべてiPS細胞のみで作って、立体的ミニ肝臓の形にすることに成功。
高い均質性で高品質なミニ肝臓が、
1度に従来の100倍以上となる2万個も作製できるようになりました。
たんぱく質の分泌やアンモニア分解などの機能も従来より高まっています。
このミニ肝臓を、肝不全のマウスに移植したところ、正常な肝機能が確認され、生存期間が大幅に改善することも実証しました。
研究チームは、
「今回開発した技術で、肝臓病患者に対する再生医療が実現できれば、従来よりも100倍以上のスケールアップが可能」
として期待を寄せています。
今後は、重い肝臓病の赤ちゃんに、今回の方法で培養したミニ肝臓を移植することを目指しています。
臓器再生医学の小林英司(慶応大学特任教授)のコメント
「iPS細胞単独で肝芽ができたことは大きな進歩。移植場所や定着させる方法などを含め、ヒトに近い大型動物で確かめる必要がある。」