iPS細胞から耳の軟骨を作製
東京大学の高戸毅教授と京都大学の妻木範行教授らの研究チームが、
iPS細胞を使って、ヒトの耳の軟骨「耳介軟骨」をネズミの体内で作り出すことに成功。
iPS細胞を使って立体的な軟骨ができたのは、初めてだということです。
イギリスの「Daily Mail」紙が報じるところによると、
今回 発表された新しい技術は、「新たな希望の光」として多方面で話題になっているそうです。
東京大学・高戸毅教授と京都大学・妻木範行教授らの研究チームは、
2011年に発見された耳軟骨内にある幹細胞をもとに人工の「耳介軟骨」を作ることに成功、
マウスの体内で5cmほどの大きさにまで成長させています。
耳の移植技術は、移植までに数多くのプロセスが必要であり、細部まで再現するには時間と技術を要します。
まず耳を作るため、肋骨から形成に優れている軟骨を取り出し、耳の形に形成する。
その後は数回に分けて手術が行われますが、心身ともに患者の負担が大きいものになります。
しかし、東大・京大の研究チームが成功した「耳介軟骨」の成型は肋骨の手術を要せず、わずかなヒト幹細胞を要するだけ。
この技術を用いれば、耳介形成手術のプロセスが大幅に短縮され、
患者への負担も軽くなると予想され、
「事故や先天性の理由で耳が小さい、または欠損している人々の様々な治療に応用できる」と医学界だけでなく世界中のあらゆる分野から注目を集めています。
この研究では、
ヒトのiPS細胞から軟骨の塊を100個ほど作り出し、直径8mmのプラスチックのチューブ3本の中に注入して、人間の耳の形になるように形成し、それをマウスの皮膚の下に移植したところ、チューブはマウスの体内でゆっくりと
溶けていき、注入された軟骨細胞同士が融合して、約2ヶ月ほどでヒトの耳の形をした軟骨「耳介軟骨」ができたということです。
耳介軟骨の大きさは実物とほぼ同じ5cmほどで、耳の軟骨がうまく形成されない「小耳症」の患者を対象に臨床試験を検討していくということです。
グループによるとiPS細胞を使って立体的な軟骨が出来たのは初めてということですが、
鼻の軟骨や老化によって破損した膝の軟骨を作りだ出せば、色々な病気やケガの治療にも応用できる可能性があるとしています。
東京大学の高戸教授は、
「今後、長期の経過を調べたり拒絶反応を起こさないかを
見極めたりして研究を進め、5年後には小耳症の患者の臨床研究を行うところまで
持っていきたい」と話しています。