iPS免疫細胞でガン破壊

和歌山県立医大の研究チームが、

iPS細胞から作製した免疫細胞の一種「樹状細胞」を使って、ガン細胞を破壊することに成功。

 

研究チームは、「樹状細胞を利用する免疫療法は既にあるが、iPS細胞を使うことで高い破壊力が期待でき、新たな療法として開発したい」と話しています。

成果は、イギリスの科学誌電子版に掲載されました。

 

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(iPS細胞から作製した樹状細胞)

 

免疫療法では、患者自身の樹状細胞を体外で培養したり、ガン細胞だけを狙って攻撃できるように手を加えたりして、体内に戻すのが一般的です。

しかし、ガン患者から取り出せる樹状細胞は数が少なく、働きが低下していること課題でした。

 

研究チームは、ガン患者のiPS細胞から作った樹状細胞でも健常な人の樹状細胞と同様の高い免疫機能を望めることに着目。

ヒトのiPS細胞から作製した樹状細胞を、試験管内で胃がんや大腸がんの細胞と混たところ、1~3割ほどのガン細胞が消失。

マウスのiPS細胞から作った樹状細胞を皮膚がんのマウスに投与した実験では、ガンが約7割破壊された。

 

樹状細胞とは、

体内の異物を発見するとT細胞に指令を出して攻撃させる連絡係のような役割を担っています。

患者の樹状細胞を培養し、ガン細胞を認識させて、体内に戻すという免疫細胞療法は、

これまでも広く行われていますが、

その破壊力をさらに高めるという目的で、iPS細胞を使った研究が行われていました。

 

課題は、樹状細胞は細菌やウイルスといった体外からの異物にはよく反応するが、

体内で作られたがん細胞にはあまり反応しないということ。

この点が解決され、免疫細胞が活発にがん細胞を攻撃出来るようになれば、新たな免疫細胞療法の誕生にも期待が出来ます。

 

iPS細胞は一度採血するだけで作製できて、治療に必要な分量の樹状細胞も作り出せるので、患者の体の負担が少ない利点もあるとしている。

チームの尾島敏康講師は、

「安全性も確認できた。さらに研究を進めたい」と話している。