エイズウイルスを壊す
神戸大学の研究グループが、
『ゲノム編集』と呼ばれる技術を使ってエイズウイルスの遺伝子を壊すことに成功。
まだ細胞レベルの実験で、すぐにエイズ感染者に使うのは難しいですが、今まで不可能とされてきたエイズ完治への応用が期待されています。
このゲノム編集という技術は、
ターゲットの遺伝子を認識するための短い遺伝子と、これを切断したりするハサミの役割をする酵素から出来ていますが、
酵素もある程度大きなタンパク質で、これを生体内で標的の細胞に届ける技術はまだ確立していないようです。
ウイルス学の亀岡正典(神戸大准教授)は、
「クリスパー/キャス9」というゲノム編集技術で、HIVが増えるのに必須な2種類の遺伝子「Tat」と「Rev」を壊す道具を作り、
培養皿の中で感染細胞にこの道具を働かせると、HIVの生産をほぼ止めることができました。
ゲノム編集は、
狙った遺伝子を壊したり、差し替えたりする技術ですが、たまたま配列の似た無関係な遺伝子に働くまちがいが起きると、細胞がガン化する恐れなどがあります。
今回の実施では、
HIVの遺伝子に似た細胞の遺伝子が傷ついたり、細胞自体の生存率が下がったりといった悪影響は見られなかったそうです。
エイズ感染者は、
複数の強力な治療薬を飲むことで、ウイルス増殖を抑えることができ、
糖尿病のような慢性病の患者のように普通の生活を送れるようになった。
しかし、エイズが感染した細胞では、
遺伝子の中にHIVの遺伝子が入り込んでいて、ウイルス本体そのものが消えてもこの感染細胞は残り続けます。
薬をやめてしまうと、この細胞がHIVを再び作り始めてしまうので、薬を一生飲み続けないといけません。
亀岡准 教授のコメント
「感染者の体内で、クリスパー/キャス9 のシステムをどうやって感染細胞に送り込むかが今後の課題」
クリスパー/キャス9 の仕組みをつくったフランスとアメリカの科学者2人は、
ノーベル医学生理学賞や化学賞の有力候補とされています。
この実験成果は、イギリス科学誌サイエンティフィックリポーツで発表されています。