「水疱性角膜症」が再生医療で視力回復

眼の角膜が濁って、視力が大幅に低下してしまう「水疱性角膜症」の患者に、他人の角膜内皮細胞を注入して再生させる治療の臨床研究について、

11人の患者 全員の視力が改善したとの研究結果を、京都府立医科大と同志社大の共同研究チームが発表しました。

3年後をめどに、これを新しい治療法として国の承認を得ることを目指します。 

 

アメリカの科学誌ニューイングランドジャーナル・オブ・メディシン」で発表しています。

 

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水疱性角膜症という病気は、

角膜を透明に保つ角膜内皮細胞が、ケガや病気などで傷ついたりして減少することが原因で発症します。

日本国内だけでも、推定で10000人ほどの患者がいるとも言われていて、

アイバンクなどから提供された角膜移植するが唯一の治療法ですが、ドナー不足と移植後の見え方の不安定さが課題となっていました。

 

京都府立医科大の木下茂教授(眼科学)らの研究チームは、

2013~2014年にアメリカのアイバンクから提供を受けた角膜から内皮細胞を取り出して培養し、40~80歳代の患者11人の角膜の内側に注入して、それを定着させる臨床試験(治験)を実施。

 

2年間の経過観察で、全員の角膜の濁りが回復して「矯正視力は平均で0.2前後から1.0前後に上昇」との結果。

(なかには、手術前 0.03が1.0になった人もいたそう。)

 

拒絶反応や感染症、重い副作用もなく、

安全性・有効性ともに確認できたことを報告しています。

 

この手法なら、提供者1人の角膜からだけでも、100人の治療に必要な内皮細胞が確保できます。

  

研究グループは、

この上記の11人を含めて、既に35人の治験を実施していて、

臨床研究の成果をもとに、標準的な医療として薬事承認を得るための治験として、

今回と同様の移植と検証を続けていき、この治療方の実用化を目指しています。

 

京都府立医科大学の木下教授(眼科学)は、

「臨床研究では、11人以外でもすべての患者で安全性と有効性を確認している。水疱性角膜症は欧米に特に多く、世界中の患者に届く医療にしたい」と話しています。

 

角膜内皮細胞移植は、提供者が不足している角膜移植に置き換わる再生医療として、大きく期待されています。